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圧倒的な石の存在感。古代からの建築と作庭の工法を再現、現代的に磨きをかけた江之浦測候所。[前編]〜石を巡る探訪記

今週は、寒さが一段と厳しくなってきましたね。
早いもので12月も半ばとなり、今年も残りわずかとなりました。
オノセキトレラン部の活躍(修行闘前編][後編)の興奮も冷めやらぬ今日このごろですが、今回は久しぶりに「石を巡る探訪記」です(^^)

石を生かした建築と作庭。江之浦測候所えのうらそっこうじょ

江之浦測候所
今回ご紹介する場所は、神奈川県小田原市にある「江之浦測候所」。
江之浦測候所は、写真を仕事にする私自身にとって、雲の上の人のような存在である杉本博司氏(写真家、現代美術作家)の構想・基本設計により生まれ、監修されています。(同施設は、構想に10年、設計に10年かかったと言われています)

石屋ならずとも、日本人必見の空間

造園計画の基本として、平安時代に書かれた日本最古の庭園書である『作庭記さくていき(冒頭の「石を立てん事、まづ大旨をこころうべき也」が有名)』の再検証を試みたものとあります。
作庭記さくていきは、まとまった作庭書としては世界最古と言われているとか。
江之浦測候所

▲神奈川県小田原市にある江之浦測候所 駐車場(同施設見学は「完全予約制」となっています)

詳しくはWikipediaなどをご覧になってみてください(^^)
特筆すべきは『石』
使用される石材は古材を基本とし、数十年に渡り収集された古墳時代から近世までの考古遺物や古材を使用しています。
ガイドにはこうあります。

各施設は、ギャラリー棟、石舞台、光学硝子舞台、茶室、庭園、門、待合棟などから構成される。
また財団の施設は、我が国の建築様式、及び工法の、各時代の特徴を取り入れてそれを再現し、日本建築史を通観するものとして機能する。よって現在では継承が困難になりつつある伝統工法をここに再現し、将来に伝える使命を、この建築群は有する。
(江之浦測候所ガイドより)

また杉本博司氏も、江之浦測候所公式サイトでこう述べています。

<前略>
縄文時代以来連綿として受け継がれてきた日本文化の特質、それは人と自然が調和の内に生きる技術だ。自然の内に八百万の神々を祀りながら、日本人は独特の文化を育んで来た。
<後略>

小野石材店でも年始広告(※)などで、「敬い、調和する」として、ボディコピーで「古来、日本人は自然の山や岩(石)、木、海などに神が宿っていると信じ、信仰の対象としてきた。」という文を英語で表現していますが、日本に生まれた先人たちが育んできた文化や技術をこの江之浦測候所では再現しているのです。
そう、古代人が尊び、神が宿るとも言われる『石』
江之浦測候所では、その多くに石が使われていることに注目です。
(※2019年1月1日 山梨日日新聞に掲載予定の小野石材店の年始広告もお楽しみに!(^^))
江之浦測候所

▲神奈川県小田原市にある江之浦測候所 駐車場(同施設見学は「完全予約制」となっています)

論より証拠ともいいます。
実際に江之浦測候所にある建築群はどんなものなのか、石は古代から私たち日本人にどう関わってきたのか。
そして継承が困難になりつつある日本建築史の伝統工法とはどんなものなのか、今回の記事、写真から少しでもその魅力を感じ取っていただけるものがあれば嬉しいです。
(※江之浦測候所では商用的使用による撮影などは禁止されています。商用目的ではなく、今回の記事のような同施設の目的や内容を紹介する記事にしたものであればOKと、スタッフの方に承諾を得ています。)

古代から近代までその石の持つ歴史・魅力を引き出し、伝統工法を使い圧倒的な空間を演出

江之浦測候所

▲施設入り口。「御用」と彫られた石の門柱。これだけで期待でドキドキします。

江之浦測候所

▲施設入り口。門の前には受付と彫られた石の門柱。完全予約制のため、予約した時間でなければ入れません。
時間までしばしここで待ちます。

待合棟

いよいよ予約した時間となり、施設内へ。
まずは待合棟へ案内され、施設内の案内や注意事項などを聞きます。
江之浦測候所

▲待合棟の中にあるテーブルは樹齢1000年を超える屋久杉が使われ、高野山の大観寺にあった水鉢が支柱に。

写真右下に見える敷石は、京都市電(1895年-1978)で使われた軌道敷石。
真っ平らではない石の上は、無骨で、歩いていると、その石の存在をしっかりと感じることができます。
江之浦測候所
待合棟脇には、苔の中に静かに、でも強烈に存在感を示す石が。
この空気感。なんとも言えません。(※ぜひクリックして大きい画像でご覧になってみてください。)
絵になりすぎます(^^)
江之浦測候所
敷き詰めた石も、アートを感じさせます。
どこもかしこも写真撮影のポイントになります!
江之浦測候所
棟内のコンセント。
(大谷石)の中に通す徹底ぶり。
この待合棟地下の庭には、鎌倉時代につくられた、非公開の五輪塔があります。
石屋としては「絶対に見たい!!」と思っていたのですが、なんとちょっと見ることができました。
実はトイレが待合棟地下にあるのですが、そのエリアからガラス越しに見ることができます。(見るにはちょっと遠い距離ですが…。案内ガイドの写真などでも、その姿は見ることができます。)
江之浦測候所は、石屋ならずとも、施設全体の空間がアートで、日常生活で私たちが忘れてしまった『見る』という行為が体験・再認識できる場所です。
デザイン設計に携わった磯崎洋才氏は、
「<前略>現代社会では忙しさに追われて自分を見失いがちですが、ここに来れば、太陽を意識し、自然を見直すことで、自分自身の存在を確認できる。その体験こそが大切なのではないかということです。」
と月刊「石材」の取材で応えています。
江之浦測候所はまさにそういう体験ができる稀有な場所だと思いました。
…と、期待が高まったところで次回へと続きます。
次回はいよいよ施設内へ。
お楽しみに(^^)
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▲この日は残念ながら曇りでしたが、それはそれで曇の日ならではの石の表情が撮れたと思います。

続編はこちらから

2019.2.6公開

江之浦測候所

圧倒的な石の存在感。古代からの建築と作庭の工法を再現、現代的に磨きをかけた江之浦測候所。[中編]
〜石を巡る探訪記
[小野石材店 公式サイト]

小田原文化財団 江之浦測候所

  • 所在地:神奈川県小田原市江之浦362番地1
  • 完全予約制:公式サイトより購入可
  • 開館日:公式サイトをご確認ください。
  • 休館日:火曜日・水曜日、年末年始および臨時休館日
  • 入館料:3,000円(当日券:3,500円)
  • 公式サイト:https://www.odawara-af.com/ja/

小野石材店 年末年始休業日のご案内

小野石材店 年末年始の休業日を下記のとおりご案内申し上げます。
期間中はご不便をおかけいたし、恐縮ですがなにとぞよろしくお願いいたします。
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年末年始の休業日

12月28日(金)午前中のみ営業
12月29日(土)休業
12月30日(日)休業
12月31日(月)休業
1月1日(火)休業
1月2日(水)休業
1月3日(木)休業
1月4日(金)休業
1月5日(土)休業
1月6日(日)休業
1月7日(月)平常通り営業

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